「こんなにつらいのなら、いっそ死んだ方がましだと思うのですね?」
「まだ夜が明けきらない時刻に目が覚めて、眠ろうとしても眠ら
れず、ひとり死ぬ方法を考えるようなことがあるのですね?」
「朝、会社のある駅で降りずに、このままどこかに行って消えて
しまえたら楽なのにと思うことがあるんですね?」
「人生はすべて終わってしまった。もう死ぬしかないと思ってい
るんですね?」
「このままでは、家族に迷惑がかかるから、自分なんか死んだほ
うがよいのだと思っているんですね?」
うつ病の患者さんを前にして、最初の診察の時に“自殺を考
えることがありますか?”と聞かない精神科医はいません。
「この峠を一緒に越えるまで、自殺しないことだけは約束して
ください」と、語りかけない精神科医はいません。
家族にとって、家族の誰かを失うことは、未来を失うことで
す。その人が一家の稼ぎ手であれば、残された家族の生活は大
変に困難なものになります。平成12年、自殺でなくなった人
の遺児は、9万人を越えました。中には、通学や進学をあきらめ、
働かざるをえなくなった子供も、多くいます。
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